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不動産は「一生に一度の大きな買物」か?

日本には「物を大事に扱い、後世につないでいく」という文化がありました。

資源が少ない国ですから、『使い捨て』という考え方が生まれなかったのでしょう。

だから、売り手として、昔から常套句として使われたのが「一生物の買物ですよ」というものです。

着物の訪問着などは「娘へ孫へと引き継がれていくものですから」と言って、悩んでいるお客の背中を押しました。

平成になって、着物はニーズが無く、古いものの多くは「布ゴミ」として扱われています。

真珠のネックレスは「冠婚葬祭の場面は、ずっと起きるものですから、ずっと使われるものですよ」と言って、悩んでいるお客の背中を押しました。

平成になって、昔のデザインの真珠のネックレスは高い値段が付きづらいもの。

特に昔の「純白の真珠」は喪の場では、ふさわしくないという風潮もあるぐらいです。

高級車を買わせるときも、同様のセールストークが展開するわけです。

 

さて、表題に戻ります。

不動産は、いまや、確実に子どもの世代に引き継いでくれるものとはいえなくなりました。

小田原のマンションと言う、ある程度流通性・換金性のある物件でもと、言わざるを得ない状態です。

箱根のリゾートマンションとなれば、尚更です。

喜んで引き継いでくれるのではなく、「だったら現金で頂戴よ」という時代なのです。

以前にも書きましたが、「負動産」を貰う人は少ないのです。

 

先日こんなニュースが流れました。

「所有者不明、全国の2割=相続登記ない土地-民間会議」(平成29年6月26日・時事通信)

民間有識者らでつくる所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也元総務相)は26日、長年相続登記されず、所有者が分からない土地が全国の20.3%を占めるとする推計結果を公表した。面積にすると九州より広い約410万ヘクタールに上るという

 

「大事な不動産を持っているのに、ほったらかしにするなんて、宝の餅腐れじゃないか」と思う人もいるかもしれません。

なんでこんなことになっているのでしょうか?

簡単に言えば、維持費がかかるからです。

日本の場合、土地を所有していたら、「日本の土地持っているのね、じゃあ、日本にショバ代として税金ちょうだい」という仕組みになっています。

それを『固定資産税』といいます。

どんな荒野でも持っていれば払わなければなりません。

払いたくないから、逃げちゃうわけです。

また加筆すれば、数は少ないですが、マンションでさえも同様の事柄が発生しているのです。

どんなにボロボロの部屋でも、固定資産税に管理費・修繕積立金が発生します。

だったら、知~らない、となるわけです。

ここまできて、「一生物の買物」といえるでしょうか?

 

もう少し、身近な話をすれば、子育ての期間に住むマンション→子どもが巣立ち、仕事の定年が向かえることにセカンドハウスを検討する、と言う方が多いのです。

だから、三井のリハウスのCMには、死んだお婆ちゃん(樹木希林)、中年のお父さん、大人の娘の登場人物になっているわけです。

お婆ちゃんの世代は、「不動産は一生物の買物」でした。

お父さんの世代は、すでにその考え方が薄いから、家を売るのです。

 

□不動産は一生物の買物ではない。

 

※プログの無断転用を禁止します。記載日/2017.7.2



小田原の海眺望マンションを海側から観察する。


小田原と豪雨を考える